釉薬の基礎知識

当店は元々陶芸産地美濃で、プロの陶芸家や老舗の窯元から頼まれて釉薬を作るということを長年続けています。現在は通販部門のほうが産地内取引よりも大きくなっています。

 

まずは当店で一般的に販売している釉薬について大きく分類して解説して行きます。

釉薬は各メーカーが独自に作っており、同じネーミングがついていても違うので、混ぜて使うのはやめてください。

当店で販売している釉薬について

マット釉薬

20世紀末辺りから、やきものの表面に艶がないマット釉薬が好まれる傾向にあると分かり、いくつかの新製品をマット調の釉薬として開発。今でもその傾向は変わらないです。各釉薬のワンポイント解説を!

 

うずらマット

表面にまるでうずら玉子のような大小の斑点が散りばめられた釉薬。自分の作った器で食事をしたい!という主婦層に大好評の釉薬。

 

いぶし黒

公募展用に大きな作品を作ったが、どんな釉薬を掛けようか?と探しているという方にお勧めして、沢山の入選実績がある釉薬。マット調の中に微妙な変化があり、通好みの釉調になっています。

 

麦の穂

大きなオブジェ作品に最適で、酸化・還元や粘土選びや焼成温度の違いでとても変化が大きい釉薬。元々は陶芸家から「深まる秋を表現したい。」と頼まれて作った釉薬。

 

白マット

衛生陶器のつやを無くしたような白だと冷たい感じがする!という意見を尊重して、わら灰に含まれる燐酸を入れることで温かみを再現しました。

 

マット調透明

透明釉薬の表面の照かりを無くしたら、白化粧の刷毛目や下絵がしっとりして飽きが来ないと好評。

 

桃山黄瀬戸

表面に単に艶がないに留まらず、豆腐やの油揚げのような質感がたまらない。釉薬原料に多量に含まれる天然素材が決めてになっています。

 

トルコマット

鮮やかな青色が魅力。一般的に鮮やかな発色をする釉薬は焼成温度が低い傾向にあります。この釉薬はちょっと低めの1200度です。

 

黒マット

カオリン質のマット釉薬にすることで、釉薬の表面の質感に味わいが出ました。プロの陶芸家からも評価を得ています。

亀甲貫入(きっこうかんにゅう)釉薬

ガラスの質感が楽しめるために、とりわけ夏に人気が高い釉薬です。2016年と17年のドイツの見本市で大好評。海外にも日本独自のやきものに関心が高まってます。

 

カラー種類が11種類(白、ヒワ、さくら、ばら、レモン、藤、青紫、水色、トルコ、深緑、グリーン)あり、ヒワ(黄緑)とさくらが最も人気があります。

 

細かいひび割れが出たり、大きなひび割れが出たりするのは、使用粘土の収縮率の違いが大きな要因です。

 

一般的な粘土の収縮は15%で、10%程度の収縮粘土を使った場合は、釉薬を二重に分厚く掛けることで、亀甲と呼ばれる亀の甲羅のような二重貫入(ひび割れ)が浮き上がったように出てきます。

 

この釉薬を焼いてみたら、釉薬が縮れたり小さな穴が沢山出てきた!という相談があります。これは作品を窯入れする前の乾燥不足が原因です。

美濃の伝統釉薬

常磐織部

織部は釉薬が垂れたり、発色が黒ずんだりして難しい!という概念を破った初心者にも使いやすい織部釉薬です。

 

鉄織部

こちらの織部釉薬も初心者でも使いやすいと好評。発色が渋いです。

 

織部S

陶芸教室での導入が多いです。ある程度の経験者向け。

 

織部(熟練者用)

プロの陶芸家御用達の織部釉薬。一品制作に多く使われています。

 

織部マット

織部釉薬をある粘土で焼いたら、光沢が出なくてつや消しになりました。これを見た窯元さんから、つや消しに出る織部釉薬を作って欲しいと言われ完成した釉薬です。

 

酸化黄瀬戸

入門編の黄瀬戸釉薬。釉薬を掛ける前に、たんぱんと呼ばれる緑色のポイントをつけると良いです。たんぱんは釉薬と混じらずに生地に浸透します。

 

室町黄瀬戸

派手さは無いですが、作品の収集家などベテランの方々が好む色。

 

桃山黄瀬戸

16世紀の戦国時代の茶人が珍重した「油揚げ手」の黄瀬戸。

 

志野釉薬は、焼成時間の長さ(火をつけてから、最高温度のねらしが終わるまでの時間)によって分けています。12時間用、24時間用、36時間用、50時間用、100時間用です。その他、ご要望によりカスタマイズもしております。最高温度は1250度の還元焼成です。

美濃以外の伝統釉薬

うぐいす唐津

侘び錆びが効いていますね!とよく言われる釉薬です。理由は、使用する赤土に含まれている鉄分と反応して発色するからです。釉薬に発色する顔料を入れたのでは、これだけ自然な発色は望めません。

 

美濃唐津

別名を絵唐津。

 

美濃伊賀

釉薬が溜まった部分が蜻蛉の目のような深い緑色に発色します。これは還元焼成によって発色しますが、発色しやすいように調合済み。

 

ビードロ

日本最古の釉薬。日本古来の薪で焚く窯内で、偶然生まれた釉薬です。

 

青竹ビードロ

本来は還元焼成によって発色するのですが、最近は電気炉による酸化焼成が主流なので、酸化焼成で発色するように調合しました。

 

黄いらぼ

灰釉薬の一種でいらいらした表面が特徴的な釉薬。釉薬を厚く掛けると、焼成によって流れてしまうので要注意。

 

うのふ

白萩釉薬に似ている。うさぎの毛筋のような柔らかくて温かい白味が人気。

 

白萩

山口県の萩焼で知られる伝統釉薬。オレンジ色の輪が点在する御本手が有名。

うまく出すポイントは、弱還元焼成、最高温度は1230度程度、専用の化粧土を使用することなどです。

 

京唐津

白化粧土で刷毛目を施した後で、この釉薬を掛けて焼くとしっとりとした表面に仕上がります。老舗の陶器ブランドでロングセラーになっています。

窯変(ようへん)釉薬

深海

釉薬を1ミリの厚さで掛けると茶色に発色し、2ミリの厚さで掛けると緑色に発色します。これを応用して濃淡をつけて釉薬を掛けると、茶色と緑色のコントラストを楽しめます。

 

緑いらぼ

深い緑色の流紋が見られる釉薬です。

 

かすみ貫入

釉薬を1ミリの厚さで掛けると透明に発色し、2ミリの厚さで掛けるとかすみが掛かったように発色します。下絵をはっきり見せたいかどうかで使い分けをすることが出来ます。

 

真珠ラスター

まるで真珠のような輝きが魅力の稀有な釉薬で陶芸専門誌にも掲載されました。人形を作って結婚式にプレゼントしたり、宝石箱を作る方など。

 

青なまこ

年輩の方々には、火鉢の色というとすぐに通じます。この釉薬が出来る前は、黒天目と白萩を重ね掛けした部分に発色する色と似ています。

 

青雲楽

亜鉛結晶釉薬の一種。最高温度のキープ時間が終わった後、ゆっくりと温度を冷ましていくことで、亜鉛のみごとな結晶が広がります。

 

青結晶

青雲楽と同様な亜鉛結晶釉薬。

 

青織部

釉薬を1ミリの厚さで掛けると緑色に発色し、2ミリの厚さで掛けると水色に発色します。これを応用して濃淡をつけて釉薬を掛けると、水色と緑色のコントラストを楽しめます。

 

青いらぼ

深い紺色の流紋が見られる釉薬です。

 

均窯

約800年前の中国が起源の釉薬で、昔の文献によると一度窯の中に入るとどのような発色になって出てくるか想像もつかないと書かれています。確かに窯内の雰囲気の違いで、萌黄色、青色、紫、赤色に発色します。

 

備前風鉄釉

人気の備前焼は使う粘土も焼成方法も特殊でまねするのが難しいです。しかし似たような雰囲気の釉薬は無いか?という要望に応えて作った釉薬です。釉薬に水を加えて薄く掛けることで、似た雰囲気を再現しました。

 

赤おりべ

450年前の戦国時代に焼かれていた焼き物の自然な発色を再現するため、試行錯誤した結果、粘土に含まれている鉄分をオモテに引き出す調合にして自然な発色を再現しました。

 

鉄砂

鉄のくさびが散りばめられたような釉薬です。地肌は小豆色です。

 

黄茶そば

公募展の出品用に大きな作品に掛けて入選したという報告多数。釉薬を1ミリの厚さで掛けると茶色に発色し、2ミリの厚さで掛けると黄土色に発色します。これを応用して濃淡をつけて釉薬を掛けると、茶色と黄土色のコントラストを楽しめます。

 

そば天目

ビールのなかに大小様々な結晶が浮かんだように出てくる釉薬。

 

米色青瓷

約800年前の中国が起源の釉薬。酸化焼成のときに発色する色を再現するのが難しく、ある粘土との組み合わせで同じ色を再現出来ました。

 

金結晶

その名の通り、全体に金色の結晶が散りばめられたように出てくる派手な釉薬。なぜか、観光地の陶芸教室で大人気です。

 

ゆず肌天目

黒地の表面がまるで果物のゆずのような肌合いに出る釉薬。