よくある失敗例:焼成編

油揚手(あぶらげて)の黄瀬戸をうまく仕上げるコツは?

油揚手(あぶらげて)の黄瀬戸とは、表面が豆腐屋の油揚げのようなつやの無い質感が魅力です。

これに挑戦してみたものの、作品の表面が照かってしまう…というご相談です。 

失敗例

酸化焼成で焼いた作品です。

表面がぴかぴかして照かりが出ています。

成功例

表面の艶が無く、しっとりとした質感の油揚げ手の黄瀬戸


回答

釉薬の表面が照かるかどうか?というのは、数限りなくテストを繰り返しましたが、本当に微妙なところがあります。

そのあたりの詳しいお話を聞こうと、黄瀬戸を専門に焼いている陶芸家さんの所へ行って、窯出しを見せてもらいました。

窯内には黄瀬戸の作品が一杯に詰まっていましたが、8割の作品は表面が照かっていて、油揚手(つやの無い)の作品は残りの2割でした。

その作家さんは、「照かったものは、一品作品にはならないんだ。確率が低いだろう?」

と苦笑い。どうしたら、確率を上がられるかなぁ?と逆に聞かれる始末…。

そこから凝り性の私は数多くのサンプルを仕入れて、灰の成分の分析値と照合しながら、早速テストをしてみました。

確かに同じ窯の中でも、照かるものと油揚手のものと両方が出てきてしまいます。

結論としては、窯内の温度差を利用して最も温度の低い場所に作品を窯詰めしておくとうまく行きます。

是非お試しあれ。

 

焼成のコツは?

織部釉薬を、酸化焼成でやってみたら、釉薬が垂れてしまいました。危うく棚板にくっつく所でした。公民館の窯なので、次回は何に気をつければいいですか?教えてください。 

失敗例

釉薬を釉薬が垂れている様子

成功例

織部釉薬が垂れずに発色された作品


回答

同じ温度の設定でも、温度上昇が早いと釉薬の表面だけが熔けて流れてしまう「表層雪崩」現象が起きやすいということです。

釉薬の通販を始めた頃の苦い経験があります。それまで地元密着で、業務用食器を製造している窯元さんだけを相手にしていたので大きい窯で、ゆっくりと温度が上がって、ゆっくりと冷めていくというのが当たり前に思っていました。

つまり焼成時間が長かった(16時間~20時間)わけです。でも通販の場合は個人用の小型電気炉で、どんどん性能がアップしているので、温度上昇がとても早く半分くらいの時間で焼きあがってしまいます。釉薬が掛かっている濃度も良品に比べると失敗例は分厚く掛かっており、それが釉薬を流れ易くしています。改善策として、釉薬に水を加えて濃度を薄くして掛けてください。

 

また、「粘土の選び方」についても気にかけましょう。粘土の種類は数限りなくありますが、ここではその粘土が細かいか粗いかで考えましょう。

細かい粘土を使えば、釉薬が流れ易くなります。また花瓶や壷といった縦長の作品の場合は釉薬の流れを加速させるようなものですから、いきなり縦長の作品に挑戦するのは辞めましょう。出来れば、お茶碗の内側に「おりべ釉薬」を掛けて焼いてみると、釉薬がどの程度流れるのか?が実感できて実際に作品を作るときに役立つでしょう。